今日は『 ひばり』( The Lark ) という曲を取り上げます。この曲は、ロシアの作曲家 グリンカが作曲して バラキレフがピアノ独奏曲にアレンジした作品です。
グリンカ ( 1804年 – 1857年 ) は「近代ロシア音楽の父」と呼ばれ、多くの歌曲を作り、ロシア語の歌曲をひとつのジャンルとして確立させた第一人者。バラキレフ (1837年 – 1910 年) もロシアの作曲家で、 民族主義的な芸術音楽の創造を志向した作曲家集団 「 ロシア5人組 」のまとめ役として知られ、オーケストラ作品のほか、ピアノ曲を多く残しました。
グリンカについて特筆すべき点はやはり、ロシア人としての誇りと自国愛ではないかと思います。グリンカはヨーロッパ中心のピアノ技術を学び、その後、イタリアに留学してオペラの作曲なども学びましたが、その過程で彼の中に「 輸入品ではない、自国の音楽を作ろう 」という気概が生まれました。この気概が後に 「近代ロシア音楽の父 」と呼ばれるほどの偉大な功績につながっていきます。
そんなグリンカが残した作品に「サンクトペテルブルクへの別れ」という12曲からなる歌曲集があり、その10曲目が「ひばり」 ( The Lark ) です。ロシアの哀愁を感じさせる短調の旋律が印象的な歌曲です。
グリンカが亡くなった後、グリンカの精神は前述の 「 ロシア5人組 」 に受け継がれました( 5人組: ボロディン、ムソルグスキー、バラキレフ、キュイ、リムスキー=コルサコフ )。この5人とチャイコフスキー( 1840 – 1893 )の活躍などによりロシア音楽は最初の黄金時代を迎えることになります。
5人組の1人、バラキレフは、グリンカの残した歌曲「ひばり」をピアノの独奏曲に編曲することをある日思い立ちます。それは、曲の途中から大変高度な技術が必要とされるダイナミックなパッセージが表れ、最後は再び悲しげな弱音で終わるという、ピアノソロに適したアレンジでした。 バラキレフ編曲のこのピアノ曲は、旋律が空に飛び交うひばりの鳴き声に聴こえ、哀愁がしみじみと伝わってきます。
この 『 ひばり』( The Lark ) を、志鷹美紗さん が昨年、母校である広島県立広高等学校の合唱コンクールでゲスト演奏されました。( 呉市文化ホールにて )
そのときの演奏映像を共有したいと思います。志鷹さんのこの演奏を初めて聴いたときは、哀愁に満ちた旋律と 透き通るような音色の美しさで胸がいっぱいになりました。いつまでも心に残る演奏です。
コメントを残す