ショパンの『 バラード第1番 』の思い出と 志鷹美紗さん の演奏

今日取り上げるのは、ショパン作曲の『 バラード第1番 ト短調 作品23 』です。

初めてこの曲を聴いたのは 高校生の頃でした。僕は中学の途中までは大のスポーツ好きでしたが、中3の夏に人生の転機がやって来て、そこからは一気に体育会系から文科系に転身。高校時代はクラシック音楽と文学に明け暮れました。

当時、親からもらった小遣いで数枚のクラシックのレコードを購入しました。そのうちの1枚が、『 The Chopin I Love 』という、フィリップ・アントルモンによるショパン名曲集で、その中に 『 バラード第1番 』 がありました。

このレコードの構成はこのようになっていました。

SIDE A

・幻想即興曲

・ワルツ第1番「 華麗なる大円舞曲 」

・3つのエコセーズ

・軍隊ポロネーズ

・ワルツ第5番

・ノクターン第2番

SIDE B

・革命のエチュード

・ワルツ第9番「 別れのワルツ 」

・バラード第1番

・ワルツ第6番「 子犬のワルツ 」

・英雄ポロネーズ

( 今、SIDE A 、SIDE B と書きながら、レコードを裏返しにしてセットするときの、あの緊張感を思い出しました。)

このレコードは当時何回か聴きましたが、特に印象深かったのは、『 幻想即興曲 』『 革命のエチュード 』 『 バラード第1番 』でした。( 僕にとってのショパン第1次ブーム )

次に、20代中盤から 30代前半にかけて、この3曲だけでなく他のショパンの曲も好きになり、頻繁に聴くようになりました。( 第2次ショパンブーム )

『 バラード第1番 』 について振り返ってみると、まず、『 英雄ポロネーズ・ショパン名曲集 』という CD の中で、フー・ツォン が演奏していた 『 バラード第1番 』 にとても魅了され、頻繁にこの曲を聴きました。

さらに、映画 『 戦場のピアニスト 』を 観たことがきっかけで、『 バラード第1番 』 を聴く機会がさらに増えました。

この映画は、実在したピアニストでユダヤ系ポーランド人だった ウワディスワフ・シュピルマン が実際に体験した戦争の真実を書き残した自叙伝 「 ある都市の死 – 1946年出版 」を元に脚色し映像化された作品です。

映画の全体のあらすじを書くことは控えますが、映画の後半、シュピルマンが廃墟の中でドイツ軍将校の前で『 バラード第1番 』を演奏し、その演奏を聴いた後にドイツ軍将校が彼を見逃す( = 助ける )場面は、とても印象的でした。

ちなみに、シュピルマンが戦争中に実際にドイツ軍将校の前で演奏したのは 『 バラード第1番 』 ではなく、『 ノクターン第20番嬰ハ短調 「 遺作 」 』だったそうです。( 『 ノクターン第20番嬰ハ短調 「 遺作 」 』 は映画の中では冒頭と最後でシュピルマンがピアノを演奏する場面で使われています。)

事実をベースに作りながらも話の内容を少し変えたり脚色したり、ということは映画にはよくあることなので、曲の変更自体については僕はあまり重要視していません。

僕がこの映画を観る際に最も重要視したのは、この映画の監督がポーランド人のロマン・ポランスキーだったということです。戦争の映画で、実話に基づいていて、ポーランド人が監督で、ピアニストが主人公。このような映画なら、必ずショパンの曲が使われることは簡単に予測がつきますが、最も興味深いのは、監督がショパンのどの曲を選ぶのかということでした。

この件について、Electronic Journal というサイトがとても詳しい解説をしてくれているので、引用します。まず、冒頭で次のような説明があります。

『戦場のピアニスト』のような映画で、ポーランドのピアニストが弾く曲といえば、同じポーランド出身のショパンの作品以外はあり得ないでしょう。ポーランドのピアニストがショパンを弾くということは、一種の祖国愛の表明であり、音楽的なパスポートになるからです。問題は、ショパンのどの作品を取り上げるかです。これは監督のウデの見せ所でもあります。

そして、ポランスキー監督が映画の中で 『 バラード第1番 』 を使用した件について、次のように解説しています。

ポランスキー監督は、映画ではシュピルマンに、バラード第1番 ト短調作品23 を弾かせています。これは実に効果的だったと思います。ポランスキーの見事な選曲です。この曲は、オクターブのフォルテで始まります。旋律は何度も中断されます。ピアニストがペダルを離したとたんに、重ねられた音はばっさりと途絶え、指で押さえられた音だけが生き残るのです。そして、この音がピアニストの指によって、新たな和音をまとって旋律を紡ぎ、再びフォルテまで高められる――これは、まるで、地獄のような戦場で死にもの狂いで生き延びるシュピルマンそのものを象徴しているかのようです。

とてもわかりやすい解説ですね。 シュピルマンが『 バラード第1番 』 を演奏する場面はおそらくこの映画の一番のクライマックスだったと思いますが、この解説で描写されているようなシュピルマンの演奏は、ずっと僕の記憶にも鮮明に残り続けました。

きっと、ポランスキー監督にとってもショパンは大きな誇りであり、『 バラード第1番 』は大切な曲のひとつだったのでしょう。

ショパンはベートーヴェンとともに僕が特に好きな作曲家ですが、『 ポーランド人にとってのショパン 』という視点でショパンについて初めて考えたのは、この映画を観たことがきっかけでした。

当時、戦争やホロコーストについて、まだまだ知らないことがたくさんありましたが、この映画は僕の問題意識を高め、音楽鑑賞に有益な視点をたくさん与えてくれました。そして、ショパンが作曲した様々な曲について、歴史的に考察するきっかけも与えてくれました。

以上、『 バラード第1番 』 と僕の今までの関わりについて書いてきましたが、この曲は現在では、最も好きな5曲のピアノ曲の中の1曲になっています。

プロフィール にも書きましたが、僕が最も敬愛するピアニスト 志鷹美紗 さんの演奏に出会えたきっかけは、志鷹さんの 『 バラード第1番 』 の演奏映像でした。このときの志鷹さんの演奏はとても心に響き、「 このピアニストの演奏をもっと聴きたい。」 と思いました。最後にその映像を共有して終えたいと思います。

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ピアノ愛好家。特に好きな作曲家はベートーヴェン、ショパン、ジョージ・ ウィンストン。ピアニストでは志鷹美紗さんの演奏が一番好きです。田舎暮らし。読書と動物と美術鑑賞も好き。